定期的に開かれる「業績検討会の資料作成」は大変な作業です
業績検討会では経理・会計担当者は会社に様々な角度からの「報告」を求められます。
- 「現在の状況」
- 「過去との比較」
- 「将来の予測」
報告するために会計・経理の担当者は何種類もの資料を作成しなければなりません。
しかし、会計・経理の担当者が持っている「情報」は、会計システムから出力される財務諸表のみです。
不足している情報は、財務諸表の「数字」から読み取れる「結果」から「経緯を推測」するしかありません。
会計・経理の担当者が「数字が何故そうなったか」を詳細に知ろうとすれば、現場の担当者に直接聞くしかありません。
しかし、現場の担当者も財務諸表を見ただけでは「数字の変化」が、どのような「要因」で起こったかを説明することは難しいでしょう。
そこで現場担当者は、「数字の変化」をいくつかの「現場で発生した要因」に結び付けて話を丸く収める傾向になりがちです。
そして、現場の担当者にしてみれば「マイナスの要因」については、あまり話したくないため、さらに情報は不足していきます。
しかたなく会計・経理の担当者は、得られた情報からつじつまの合う「ストーリー」を作成し、報告することになってしまいます。
このような「分析方法」では、どうしても「結果の反省」にとどまり「今後問題になりそうな要因を早期に発見する」や「良い結果につながりそうな要因の把握」をすることができません。
あらかじめ現場担当者に分析資料を現場に渡した上で「聞き取り」をする
現場担当者は日々の営業の中での出来事が、どのように営業成績(数字)につながっているかは分かりません。
結果としての「決算書」を見せられても、慣れていないのでそこから情報を読み取るのは難しいと思います。
「会計システムの財務諸表」から分かり易い資料を短時間で作成し、その資料を現場担当者に渡し、現場の立場から状況を把握・分析してもらい、その説明を「聞き取り」することができれば詳細な情報を得ることができるようになります。
通常、時間の関係上から現場に渡すことができる「資料」は、単純に数字を集計しただけの「財務諸表」です。
複雑な「分析資料」の作成には時間がかかるため、何回も作成するのは避けたいので「現場の説明」を聞くまでは詳細な資料の作成をしたくないのが実情だと思います。
現場の人でも分かり易い「情報」を盛り込んだ「分析資料」を短時間で作成し、それを見てもらった上で「現場の聞き取り前」ができればより良い分析資料を作ることができます。
会計システムが自動作成する「損益計算書」
この資料では「今こうなっている」、「結果としてこうなった」の情報しか得られません
Excelで作り変えた資料
「財務諸表」では、数字の変化やどこに着目してよいか分かりにくいため、要点をまとめた「資料」を作成することになります。
- 「ある1部分」を切り取っているので、作成者の主観が入ってしまう
- 資料にない詳細な内容の説明を求められた時に、即座に対応できず「調べておきます」になってしまう
- 手作業での作成になるため、資料作成に時間がかかってしまう
- 会計システムとの連動も難しく、「手入力」になるので入力ミスの危険がある
全体(総合計)をまとめた資料では、数字の「変化の要因」が分からない
「財務諸表」から、収入と支出の「合計」だけを事業所別に並べた資料では、「どの科目」や「事業部」が「変化の要因」になっているかが分からないため、その情報を盛り込んだ別の資料が必要になってしまいます。
収入と支出の「合計」だけを抜き出してまとめた資料
事業部別の資料では「他事業部」や「全体」との関係が分からない
事業部ごとに、主要な科目を月別に集計することで「事業部ごとの推移」を表現した資料。
この資料は「事業部」毎に作成しなければならず、事業部が多い場合は資料の枚数が多くなってしまいます。
事業部単独の情報は分かりますが、「 事業部単独で見ると大きく落ち込んでいても全体に与える影響が少ない」など、「事業部の相互関係」や「全体に与える影響」などは分かりません。
事業所ごとに「月ごとの推移」を大きな科目だけでまとめた資料
条件付き書式を使って、自動作成される「財務諸表」を加工する
条件付き書式を設定した資料は、財務諸表をそのまま使って加工して資料を作成することができるので、「入力ミスの危険性」がなく、短時間で作成することができます。
条件付き書式の設定で、「他の表(シート)と比較」数式を使えば、「1枚の表(シート)」で「変化の要因」を表現することができます。
通常の方法では、事業部の数が10ある場合、事業部ごとの資料と総合計の資料で最低でも11枚の資料になってしまい、「見る側も説明する側も混乱」してしまうことになります。
条件付き書式で、平成30年度と前年度(29年度)の2か年を比較する資料を比較します
数式を使って、他の表(シート)と比較する条件を作成します。
- 平成30年度が、平成29年度より10%以上増加した「セルを青く」塗りつぶす
- 平成30年度が、平成29年度より10%以上減少した「セルを赤く」塗りつぶす
平成30年度と29年度を比較し、条件に応じて「色」を付けた資料
巨大な資料でも全体を把握することができます
20を超える事業所を一覧にした決算書で、全体を表示したときに数字が見づらくなっても、「色」で「全体の状況」を視覚的に把握することができます。
条件付き書式によって資料に「色」を付けるメリット
- 一部分ではなく、全体を把握できる。
- 会計システムが作成する「財務諸表をそのまま使う」ので入力ミスが発生しない。
- 「財務諸表をそのまま使う」ので、経理の「月締めの作業」が終了した時点から、数分で作成できる。
- 「数字を修正」しても、書式は自動更新され「最新の資料」になる。
条件付き書式の作成方法
比較したい財務諸表(決算書)「2種類を別シートで用意」します。
※ 様式(セルの配置)は同一であることが必須です
セルに「条件付き書式を設定」します
平成30年の資料に「条件付き書式」を設定します。
- 書式を設定する部分を範囲選択します
- 「ホーム」タブを選択
- 「条件付き書式」を選択
- 「新しいルール」をクリック
「新しいルール」を作成します
新しいルールのダイアログで、「条件付き書式」を設定します。
- 「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選択
- 数式を入力
- 「書式」をクリック
- 「塗りつぶし」を選択
- 「青」をクリック
これだけの操作で、平成29年度より10%以上(1.1倍)増加した、平成30年度の該当せるが青く塗りつぶされます。
この方法の利点は、翌期の資料作成が「貼り付け作業」だけでできることです。
会計システムから作成した「CSVの資料」をこのシートに張り付けるだけで、即座に資料が出来上がります。
「10%以上減少したセル」を赤く塗りつぶします
- 数式「 =B3<=B3*0.9」を入力
※ このままだと「0」の部分が青く塗りつぶされるので、数式を設定します
- 数式「 =B3=0 」を入力
- 書式は塗りつぶしを「色なし」に指定します
※ こちらの記事も参考にしてください。
条件付き書式を使って、目で見て情報が伝わる資料を作成する - Excelの機能を活用して、事務作業の省力化や経営分析をする
条件付き書式は同じ場所(範囲)に複数の条件を設定できます
今回は「10%増加」と「10%減少」を設定しましたが、指定する「条件」を増やしていけば様々な分析ができます。
- 「20%以上増加」したセルを「緑」で塗りつぶす
- 「15%以上減少」したセルを「黄」で塗りつぶす
「20%以上増加」と「15%以上減少」の条件を追加した資料
数式は簡単に修正(変更)できます
「条件は簡単に変更できる」ので、プロジェクター等を使ってリアルタイムに変更しながら説明することもできます。
このように「条件付き書式」を使えば、「財務諸表」を瞬時に「分析・検討資料に変える」ことができます。
この方法を使えば「去年の表」と「今年の表」を簡単に1枚の資料で比較・検討することができます。
Excelを使って「2期を比較」する表やグラフは、どうしても「ある部分を切り取って作成」せざるを得ません。
また、全体を比較しようとすれば数10種類の資料を作成することになります。
せっかく莫大な資料を作成しても、一覧性がないので相互の関係性はわかりません。
そして結局は「資料を説明するための、資料を作成」することになります。
今回作成した資料は、「全体の中でどの部分がどのように変化したかを視覚的に見せる」ことにより、相互の関係性が分かり易くなります。
そして説明する際にもこの資料を使えば、聞く方が理解しやすい説明をすることができます。
情報の内容別に複数の資料を使って「報告」をする場合、次のように「説明しづらく」、「聞きづらい」内容になってしまいます。
- 「資料3のA事業部の収入は増加しましたが、資料4のB事業部で支出が増加したため、資料10の全体での収支は前月と同様になりました」
- 「資料10の全体での純益の増加の要因は、資料5のC事業部と資料6のD事業部の収入増加が要因です」
条件付き書式を使って「色」を付けた、「全ての事業部を一覧できる資料」を使うことで説明しやすく、 説明を聞く側も、目の前の資料の色の変化で「視覚的に状況をイメージ」できるので理解しやすくなると思います。
- 「A事業部の収入は増加しましたが、B事業部の支出が増加したので全体での収支は従来どおりになりました」
- 「全体の合計が増加したのは、C事業部とD事業部の収入の増加が要因です」
条件付き書式は、「元の情報に手を加えることなく新たな3次元的な情報を加えることができる」便利な機能です。
新たなフィールド(項目)を加えると、表が大きくなってしまったり、様式が変わってしまい、過去のデータや新たなデータをコピペすることができなくなってしまいます。
このような場合も、条件付き書式を使えば「表の様式」を変えないので問題なくコピペすることができます。
条件付き書式を使って情報を把握しやすい資料を作ることによって、「説明する」、「情報を聞く」、「自身が分析する」ことが簡単にできるようになります。
条件付き書式を使いこなして、簡単に作れて分かり易い「報告書」を作ってみてください。
(その2)に続きます。
- 定期的に開かれる「業績検討会の資料作成」は大変な作業です